襟を立てた少年

生きるのが楽しくて楽しくて仕方がない人へ

コウくんのめざまし

 

10月31日8:00

 

「コウくん早く起きないと遅刻しちゃうわよ!」

ママがいつものようにコウくんの部屋に入って来て、コウくんがしがみつく毛布をはがす。

 

「ううん...起きたくない。今日はなんだかお腹痛い気がするから学校休みたいよ。」

「うそおっしゃい!ママもあと30分で出ちゃうんだからさっさと起きてちょうだい。」

 

押し問答の末、結局コウくんはママにおんぶされるようにしてリビングについた。

とっくに用意された朝食を半目でもそもそ食べる。それから今日出さなくちゃいけないプリントをママに見せて「ねえ!これ今日までに先生に出さなきゃいけないプリントだからハンコちょうだい!とせがむ。

 

ママが口紅を片手に洗面所から出て来て「どうして昨日のうちに出してくれなかったのよ!」とぷりぷりしはじめた。コウくんはあわててご飯を半分残したまま席を立った。

 

「ねぇ、ご飯残すのはいいとしても台所まで食器持ってってよね!!」というママの声を無視して逃げるように玄関に飛び出しランドセルを背負う。コウくんは「そんなことしてたら遅刻しちゃうよ!いってきまーす!」と言い捨てて家を飛び出した。

これがコウくんの日常の風景だった。

 

 

3日後。

 

 

朝9時。

コウくんが目覚めると、お母さんがいつものように起こして来ないことに気付いた。コウくんは時計を見ると飛び上がった。

完全に遅刻じゃないか!!「お母さんどうして起こしてくれなかったんだよ!」と言いながらドタドタとリビングに降りていく。

 

リビングに降りるといつもは用意されている朝ご飯はなく、コウくんはお母さんが家を出て行ってしまったのではないかと心配になった。それから玄関に行ってお母さんの靴を確認しに行くと、なんとお母さんの靴もお父さんの靴も昨日のままそこにあった。

 

コウくんはもう訳がわからなくなって、泣きべそをかきながらお母さんとお父さんの寝室に飛び込んだ。すると、二人とも気持ち良さそうに寝ていて、でも今日は火曜日なのでお母さんはパートに、お父さんは会社に行ってないとおかしいはずだった。なんて言ったって今は9時なのだ。

 

コウくんはお父さんを揺り起こしながら「お父さん!もう9時だよ!会社行かなくちゃ!」と言うと、お父さんは眠そうに「今日は...会社休もうと思って...だって眠いし寒いし...。」と言ってごねる。

—まるで子供じゃないか!とコウくんはぎょっとした。お父さんはとりあえず諦めて、お母さんを揺り起こした。

 

「お母さんお母さん!もう9時だよ!どうして起こしてくれなかったの!それにお母さんもう家出る時間じゃない!それに僕の朝ご飯はどうなっちゃったのさ!」

 

「ううん...お母さんなんかちょっと風邪かもしんないから適当にやっといて」

 「ええっそんなぁ!大人なのにそんなのおかしいよ!」

「だからー...お母さん大人疲れちゃったからお休みね。たまにはコウちゃんやってよね。」

 

コウくんは途方に暮れてお父さんとお母さんの寝室を出てリビングへ戻った。

学校はとっくに始まっている。学校に電話しなくちゃ、と思うけれど学校の電話番号がわからない。

諦めて朝ご飯の支度をしようとする。お米の場所をなんとか探して引き戸を開いてみるとお米が沢山入った容器が出て来た。それを開けるとお米のようなものがざくざく入っている。ところが、お米はいつも食べているみたいにホカホカしていなくて砂利のようにバラバラしている。これってどうしたら食べられるんだろう...??

何もかもママにやって貰っていたのでコウくんに出来ることなんて何にもなかったのだ。

 

 

 

 

「(そろそろいいかね)」

「(そうね。十分ゆったりさせてもらったしね。)」

寝室でパパとママがひそひそ話している。

今日は文化の日で、休日だったのだ。

 

 

 

 

 

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