襟を立てた少年

生きるのが楽しくて楽しくて仕方がない人へ

上司がインフルで倒れたとき、僕は蟻について考えていた

月曜日、いつも通りに出社した。

朝8時に席について、一時間誰にも邪魔されずに働く。8時45分くらいにみんな集まって、9時前に朝礼が始まる。そこでいつもチームのメンバーがそれぞれ今日の業務内容について報告するのだけれど、その日は上司がいなかった。

 

月曜日に上司がインフルで不在。考えうる中で最悪のパターンだと思った。

例えば木曜日にインフルエンザで倒れた場合、5日後でカムバックできるから土日を挟んで火曜日には出社できる。ところが月曜日に倒れた場合、月火水木金と平日5日間出社できないのである。

 

ところで僕は上司の直属の部下である。

というと説明が不親切かもしれない。

 

僕の会社の僕のチームは基本的に

上司→先輩→部下

という編成で、川上から川下に流れるように仕事がふられていく。

しかし僕は

上司→僕

という直結する形で仕事をしている。なぜだかはよくわからないけれど先輩のキャパシティーの問題なんだと思う。まあそれはいいとして。

 

僕のチームは6人いるのだけれど、上司の仕事を受け持ったり手伝ったり、あるいは上司から直接仕事をもらっているのは僕だけなので、上司が具体的にどう動いていて何をしているのかわかっているのは僕しかいないのである。

 

そういうわけで上司が倒れて、その仕事はすべて僕が受け持つ形になった。

当然チーム全員で割り振るのが公平な感じがあるだろうが、各々忙しいし、上司の仕事をわかっていない中で仕事を割り振ると時間がかかるうえにリスクが大きいのである。

 

餅は餅屋、といえば誤用だが、上司を餅屋だとするならば残る餅屋が僕しかいなかった、といえばいいか。

 

 

ところで、上司がインフルエンザで倒れ、電話越しに死にそうな上司から進行中の仕事内容を聞いている途中に僕は蟻について考えていた。

 

 

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パレートの法則。とはいえ、日曜日のパレードのパレードではない。イタリアの経済学者パレート博士が考案した組織法則。8割の結果は2割の原因が生み出しているという。この法則はよく蟻で例えられる。

 

働き蟻のうち、常に2割の蟻は働いていないという。

ほかの蟻が周辺をパトロールしたり、角砂糖を運び出したり子蟻の世話をしたり巣の補修をしている間、働かない蟻(以後怠け蟻と呼ぶ)は何をしているのかと言うと、あたりを何をするでもなく散歩したり女王蟻の触覚にぶら下がって遊んだり、とにかくやりたいようにやっているらしい。

 

それで、その役立たずの怠け蟻を巣から取り除く。そうすると巣の中の100%が働き蟻になって、生産性が最高になる、と誰もが思った。ところが。

なんと働き蟻の中の20%がまた怠けだしてしまうというのだ。もともとは働き蟻だったのに、怠け蟻がいなくなった途端自分が20%に転じてしまう。

こうして蟻の社会では常に20%の怠け蟻が存在している。実に不思議だと思う。

 

 

最近北海道大学院の研究チームによって、「2割の怠け蟻の存在はコミュニティーにとって必要不可欠」という研究結果が提出された。つまり、2割の蟻は必要悪ではなく、いなければ困る存在ということだ。

研究内容は巣を人工的に用意し、それぞれの蟻に着色を施し個々を判別できるようにしたうえで蟻を増減させて生産効率を計算する。2割の怠け蟻を積極的に取り除いた蟻の巣は、働かないゴクツブシがいなくなったわけだから生産効率が上がると思われたが、生産効率は上がらずに衰退してしまったという。逆に怠け蟻のいる巣のほうが生産効率は高く、長く巣が存続したという。

 

仕掛けは「怠け蟻の真の役割」にある。

働き蟻はそれはもう一生懸命働くのだけれど、ずっと働いていれば疲れてしまう。あるいは、外敵に襲われたり思いもよらない事故で死んでしまったりする。そんなときに急に働き蟻に転身するのが怠け蟻なのである。

つまり怠け蟻は球技における補欠のようにベンチで待機していて、いざというときにコミュニティーを守るために働き蟻としてフィールドに飛び出すのである。

 

僕はこのことをニュースで読んで、鳥肌が立った。のをよく覚えている。

そして上司が倒れた時にこれをふと思い出したのである。

 

僕は怠けものではないが、結構早めに帰らせてもらっていると思う。定時退社もざらだし、8時には帰る。もちろん残業で遅くなることもあるし、仕事はまじめにこなしている。ただ、毎日0時くらいまで取りつかれたように働く先輩に比べれば、まあ僕なんてのは怠け蟻みたいなものなのかもしれない。おかげで僕は毎日きちんと睡眠をとって、栄養を取り、過度なストレスを受けずにつまりは健康そのものなのである。

 

それで上司が倒れた時に、「俺の出番だ」と強く思った。僕のパレードだった。

僕は蟻のことを考えながら終電まで働きまくった。そういう一週間を駆け抜けたのが今週だったわけだ。定時まで上司の仕事をして、定時から自分の仕事をした。かわるがわる営業がきて新しい仕事をよこした。片っ端からそれを捌いた。なんというか普段過酷な目に合っていない分「たまにはいいか」と思って文句もちっとも出なかったし、そんなことを考える余裕もないまま働きまくったと思う。

 

それで金曜が終わったのでこの文章を書いている。

今日で働き蟻をやめていつもの怠け蟻に戻る。怠けちゃいないけどね。

なんというか今週は自分のチームを体を張って守れた気がして大変満足だ。

 

死ぬほど疲れたのでゆっくり休みます。

 

またねー

 

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