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襟を立てた少年

生きるのが楽しくて楽しくて仕方がない人へ

美大でひたすら練習した「楕円」と「直線」

 

社会人になったときなんてちっとも想像できていなかった美大の頃の話をします。

 

僕はもともとカーデザイナーに憧れて美術大学を目指した。

美大というと大方の人は絵の具や彫刻の世界を想像するんだけど、それは僕達が「ファイン系」と呼んでいる学部の人たちのことだ。美術大学には大きく分けて2つの学部がある(教職等を含めて3つに分ける場合もある)。デザイン系とファイン系だ。

 

デザイン系の中にも様々な学部がある。染色・服飾を扱うテキスタイル(略してテキと呼ばれる。どの美大もテキは9割が女子なのでごく少数の男子は羨ましがられたり憐れまれたりする。)、建築家やインテリアデザイナーを目指す空間デザイン学部(空デと略される。学校に依っては室内建築とか呼び名が変わるがここでは一般的なものを挙げる)、身の回りにある工業製品をデザインするプロダクト学部(ダクトと呼ばれる。ダクトは六割くらいが男で、ロボット好き・メカ好き・車好きが多い)、パッケージデザインや広告デザインを学ぶグラフィックデザイン学部(グラフィックと略す。多摩美術大学のグラフィック学部は毎年人気で鬼門なのでタマビのグラフィックのときはタマグラと呼んだりする)などなど他にもアニメとか写真とかウェブとかあるんだけど、大体このくらい分野がわかれている。ちなみに括弧で書いた略称は美大間では浸透している呼称なのでもし美大出身の人がいたら「あ、ダクトなんだ〜」とか返したら通っぽいよ。だから何だってなると思うけどね(笑)

 

さて、じゃあカーデザイナーになりたい僕はどの学部に入ったか。もちろんダクトだ。

ちなみに僕は結果的に空間デザイナーになるので、おそらく空デに入るのが正解だったんだろう。まあ、空デに入ったらそれはそれで違う将来になっていたと思うけれど。

ダクトと一口に言っても各々やりたいことは別れている。人気はカーデザインだけど、結局たぶんカーデザイナーになった人は同期だといないんじゃないかな。狭き門だからね。カーデザインは…。それから家具デザインが人気だった。あとは電子機器ね。ケータイとか音楽プレーヤーとか、障害者向けの道具とか。あと工芸とか、ジュエリーとか。文房具も人気ジャンルだった。インフラもあって、渋滞が発生しないためのシステムの提案をプロダクトの観点から発表している人とかいたかな。

 

僕は車一直線だったかといえば全然そうではなく、なんというかカーデザインに燃えて大学に入ったものの、蓋を開けてみたらプロダクトの中でもこんなにジャンルがあるのか!とびっくりしてしまって、学生時代は結局いろいろ作っていた。今まで3色ボールペンで絵を書いていたら100色ペンセットを叩きつけられたような感じだった。それで僕は椅子をつくり、カレンダーをつくり、時計をつくり、照明をつくり、体重計をつくり、長靴をつくった。空間演出の作品もつくったし、マスクのパッケージデザインもした。香水のブランディングもした。ワインブランドのロゴデザインもした。振り返ってみれば随分色々つくったものだ。

 

ちなみに卒業のときに周りを見渡して、結局デザイナーになったのは10人くらいだった。生徒は全員で40人いた。これが多いのか少ないのか僕にはわからない。院に進む人もいたし、営業職を選んだ人もいたし、実家をつぐために田舎に帰る人もいた。

 

 

高校生のときはデッサンをひたすらやっていたので一枚の絵を描くのに3時間とか6時間とか書けていたけれど、大学に入ってやったのは一枚10分、長くても1時間程度のスケッチだった。僕は山中俊治Suicaの改札機をデザインしたひと)の著書の影響でひたすら楕円を描く練習をした。山中俊治は今でもまず素振りとかストレッチをするように楕円を大量に描くらしい。これはずっと後になって気づいたんだけどスケッチにおいて楕円がかけないのは致命的だ。楕円は、コップの縁を描くときくらいしか使わないと思うかもしれないけど意外とスケッチの基礎だ。これはスケッチをやってみればわかる。カーデザイナーであればタイヤを描くのは避けられないのでなおさら大切な技術だった。そういうわけで僕のスケッチブックは楕円まみれだった。大学で一番楕円を描いた自信がある。


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これは僕がさっき描いた楕円群だけど、こんな具合で楕円を描いた。大切なのは左右対称であること、様々な膨らみの楕円がかけること、線のはじまりと終わりがつながっていることだった。

 

楕円と同じくらいやったのは直線の練習だ。直線を描く大切さは色々なデザイン本で書かれているけれど、心に残っているのは「フリーハンドで直線が書けない人はデザイナーになれないと思ったほうがいい」というのと、「定規は直線をひく道具というより、直線をひけない人間を助けるための道具」というのだ。両方とも水野学だったような気がしないでもないけどはっきり思い出せない。いずれにせよ両方けっこう刺さった。直線が書けないとデザイナーになれないんや、と思って必死に直線をいろんな角度で描く練習をした。そのおかげで僕は今でも楕円と直線の組み合わせを描くことが出来る。これはあらゆるスケッチに応用出来る技術なので数え切れない場面で僕を助けた。


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こういう車のスケッチも描いたりしたけど、見ての通り上手くかけなかったし今でもうまく描く自信はない。僕はカーデザイナーになるために美大に入ったが、美大に入った時点で広がった世界を走り回るのに夢中で、車を描く練習はそんなに熱中しなかった。おかげで4年制のときに思い出したように受けたトヨタは2次試験の実技で落ちた。ちなみに試験内容は「100万円クラスのファミリーカーをデザインせよ」だったと思う。


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就活のときのはなしはまた別の機会にするとして。

今回は美大時代のはなしをかいつまんでしました。

読んでくれてありがとう。

 

 

 

おしまい