襟を立てた少年

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実録!副鼻腔炎手術 その2

 

手術前日

 

どの辺りから書けばいいのかといえば、

やはりこれから副鼻腔炎手術を受ける人に対して有用な文章を供給することが、

一応は文章をこうして書いて公開している僕のせめてもの行いであると思う。

 

 

 

 

 

手術前日あたりから書こうと思う。

 

 

 

実は、

僕は手術自体には全く緊張がなかった。

 

 

 

手術というと少し大仰な感じがするが、日帰りであることだし、

全ての行為は全身麻酔中に行われることである。

 

 

 

 

全身麻酔といえば意識を失っているわけだから乱暴な言い方をすれば死体とあまり変わらない。魂が逸脱している感じがするから、その間に何をされようがあまり僕とは関係がないような気がしてしまう。

 

問題なのは手術の後、鼻から延々と出血して、それを何度も脱脂綿を取り替えながら口呼吸でひたすら耐える...という部分だったが、それもまぁ耐えるしかないし、

だいたい「術後は脱脂綿を詰めるので鼻が塞がってしまいますよ」と言われたところで「こっちは鼻が塞がってるから手術受けるんじゃい!鼻がふさがることなんてこっちは日常茶飯事なんじゃい!」という言い分で、全くそれに怖気付く理由がなかったのだ。

 

 

 

 

そんな僕は一番恐怖したのは何と言っても全身麻酔そのものである。

 

 

 

 

ネットで調べてみると全身麻酔は何100000分の1か何かで眠ったまま意識が戻らないだとか、全身麻酔がかかる瞬間は臨死に近いとか、落ちる感覚がジェットコースターみたいだとか、脅すようなことばかり書いてあって嫌になる。

 

 

全身麻酔などというものは生まれてこのかた受けたことがないが、

想像するだけおっかないものだ。

 

 

臨死体験と言われると、なるほど、臨死に近い感覚なのかもしれない。

 

 

眠りに落ちるのとは事情が異なる。

 

 

意識を失うというのは、どういう感覚なのだろう。

変な話、意識を失って、目を覚ました後の僕は僕なのだろうか?

 

 

 

意識を失う直前から、意識を得た間の時間感覚はあるのか?

 

その間、僕の意識はどこにあるのだろうか?

かなり不安な気持ちになってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

手術当日

 

それから手術当日になった。

 

 

 

この日は有給をとって、朝から鼻クリニックに赴く。

父親に同伴をお願いしていたので現地集合。

 

 

 

それから受付で限度額認定証やら保険証やら会員証やらを提出して手術待合室に通される。この手術待合室で1時間30分ほど待機したのだけれど、とにかく何もないのと、「これから意識を失って、失っている間に鼻の粘膜を切除し、骨を削る」という圧倒的リアルがそこそこのストレスであった。

 

 

僕は「これからしんどいことが起こる」ことに対してはそれなりの耐性がある自負があったし、前述の通り手術そのものはちっとも怖くなかったのが、待合室での時間は長く感じた。ひたすらスマホをいじったり本を読んだりして過ごした。

同伴の父親が時間を持て余していたので、今度副鼻腔炎を受けるかたは、同伴者の方に暇つぶしの読み物などをありったけ持ってくるように伝えた方が良い。かなり暇です。

 

この間に作務衣に着替える。

これに着替えるといかにも病人みたいな風情である。

 

実際には鼻が塞がっているだけに過ぎないのだが、この作務衣を来ていると本当に自分が病人になったような気持ちになり、具合が悪くなりそうになる。

 

 

 

 

それから看護師がきて血圧と体温を測ったり、麻酔医がきたり、医者が挨拶にきたりした。

 

 

この挨拶にくるのって面白い。海外でもそうなのかな。

 

「やはり顔も知らない人に麻酔打たれるのは不本意でしょうから挨拶にきましたよ。私があなたを眠らせる係です。うまくやりますのでここは一つよろしく」といったところだろうか。

 

 

手術前に医者に挨拶されると何やらマジな感じになっていよいよ深刻な気分になる。

 

 

 

 

手術!

 

それからいよいよ手術の段階になった。

 

 

看護師がやってきて事も無げに「ではスリッパを履いてこちらにお越しください」と言った。僕はキョトンとした。この待合室にはベッドがあり、そのベッドはよく医療ドラマとかで患者を運んでいる移動式のベッドだったため、

てっきり僕はこのベッドで眠らされて、眠ったままどこかへ連れて入れて、わけの分からぬまま手術をして、そしてここに戻され、目覚める!みたいな動きを勝手に想像していたのだ。

要はこの部屋で眠り、この部屋で目覚める事のみが僕のパートだと思っていたのだ。

 

 

 

 

それが「こちらにお越しください」ときたもんだ。おやおや。

 

 

 

僕はキョトン顔のまま言われるがまま看護師についていき、父親に別れを告げ、

待合室の正面の部屋に向かった。

 

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部屋には手術室、と書かれており、

その横の壁についているジェル状の洗浄液で手を洗うように指示された。

 

 

それから自動でドアが開き、手術室に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて 手術室は圧倒的に手術室であった。

 

 

 

 

 

ドラマ「コードブルー」で山Pやガッキーが血だらけになりながら患者を助けていたあの手術室である。

 

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大きなモニターの下に手術用ベッドがあり、

その周りを複数人の医師が忙しそうに歩き回っている。

メスみたいなのをかちゃかちゃ並べたり、「そっちのあれとって」と声を掛け合ったり、もうなんというか手術する気満々である。現場感がすごい。

 

ここまで現場感がすごいものを見せつけられるとは思わなかった。

 

 

間違いないように名前を名乗るように指示され、「〇〇です!」と名乗る。

 

 

 

「はーいよろしくお願いしますねー。ではそこに仰向けに寝てくださいねー。」

 

と言われ、促されるままに横になる。

身体中にシールみたいな測定器をペタペタ貼られ、口には酸素マスクをつけられる。

すごい手際である。そいえばこの手術は一日平均13回くらいやっているありふれた手術なんだっけー。そんなことを無理に思い出して緊張を意識から追いやる。

その意識すらもこれから奪われてしまうのだ。

 

 

 

 

それでは点滴を打ちますね。ちくっとしますよ。

と言われる。もう好きにしてくれ。

 

ちくっとする。そういえば麻酔ってどうやるんだろう?

この酸素マスクからむわーって来るんだろうか?

ドキドキしながら考えていると「それでは点滴から眠くなる薬入りますよー。」

と声がかかる。

 

 

 

あー点滴から血液に流し込むのか。

いよいよかーあー怖い

 

怖いなー!

 

 

 

薬を流し込まれて3秒くらいすると急に軽い吐き気に見舞われて

グエッとなった。たまらず咳をする。ゲホゲホ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーそこからの記憶が僕にはないー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ目を覚ますと思いますよー」

という声が聞こえた。ふわっと目がさめる。普通に朝目覚めるような感覚だ。

しかし頭がぼーっとする。「起きました」と試しに声を出してみる。喉が乾いている。

 

 

そこは待合室であった。

手術室へは歩かせて行った割には目覚めるのは待合室だ。当たり前か。

体がだるい。インフルエンザの治りかけの時のような気分だ。

 

それから父からお茶やおにぎりをもらい、久しぶりの飲食にありつく。

鼻にはとんでもない量の脱脂綿が詰められ、鼻はジャイアンのような団子鼻のように肥大化していた。その脱脂綿も血で真っ赤に染まり、その血がポタポタとこぼれないように鼻の入り口はガーゼで抑えられていた。

 

10分もしないうちにガーゼは真っ赤になってしまい、慌てて取り替える。

鼻は完全に脱脂綿によって埋められており、僕は魚のように口をぽかんと開けて呼吸をした。

 

 

 

それから医者が挨拶に来て、ナースが体温と血圧を測る。

体温は37度ほどだった。これから出血の影響で体温が上がるらしい。

 

 

 

 

それからトイレに行って、トイレに行くと麻酔がそれなりに抜けた証拠なので帰って良いということで父の運転してくれる車に乗って帰った。

 

 

 

術後の様子

 

 

それから実家に帰宅。

父から鼻クリニックに無事帰宅した旨を連絡してもらう。

 

 

僕は早速ソファーに横になる。椅子に座るような元気はない。

麻酔は24時間ほど体に残るというが、そのせいかとてもだるい。

 

 

そして明らかに熱があるようでふらつく。

体温を測ると38度であった。

またガーゼが血でジュクジュクして来たので取り替える。

これで術後5回ほどガーゼを取り替えたことになる。

 

 

 

 

手術からそのあとはいくらでも時間があるだろうからと本をたくさん用意していたが、

ちっとも集中できない。意識を一箇所に集めて物事を考えることができない。

失恋した直後のように考えがまとまらず、とにかく意識が漠然としていて役に立たないのだ。

 

 

 

仕方がないので栄養失調のストレートチルドレンのように横になってぐったりしていた。たまに浅く眠った。目がさめてガーゼを取り替える。それをひたすら繰り返した。

 

 

 

夜は食べやすいものを母が用意してくれた。

ヨーグルト的なものを食べた気がする。鼻が詰まっているので味はよくわからない。

 

 

血のようなものが喉を伝って来て咳き込むことがあった。

口が開きっぱなしなので喉がどんどん乾燥する。その影響で喉が痛い。

麻酔で頭は漠然としていて何もできず、発熱が続いていて気分が悪い。

 

 

これは思ったより大変かもしれないぞ、と僕は思った。

 

 

 

 

 

続く